はしがき
歴史教科書とは、日本の未来を担う子供たちが、日本とはこれまでどのような歴史を歩んできた国なのかを学ぶために読むものである。であればその内容は、日本がこれまでに歩んできた輝かしい来歴を紹介して、日本という祖国に対する誇りと愛情を育み、日本に生まれ育った喜びや、日本の未来を担うことへの希望を培うことを旨とすべきであろう。
であるからこそ、学習指導要領でも、歴史教育の目標として「我が国の歴史に対する愛情を深め、国民としての自覚を育てる」との項目が掲げられており、歴史教科書もまたその趣旨に沿った内容でなければならないはずなのである。
にもかかわらず、平成18年現在使用されている中学校の歴史教科書(8社が発行している)のうち、この趣旨に沿ったものと評価できるのは、わずかに扶桑社の発行する教科書のみである。その他7社の発行する教科書は、その精神とは反対の、いわば「我が国の歴史に対する嫌悪感を深め、国民としての後ろめたさを育てる」ものといわざるを得ない。歴史には、陰もあれば光もある。その光の部分をひたすら覆い隠し、陰の部分をことさらに強調して、「日本とは、こんなにひどいことをしてきた国です」と子供たちに紹介しているのである。しかも、日本を貶めるためとあらば、史実を無視したデタラメも平気で載せている有り様である。
そこで本稿では、平成18年度以降中学校の授業で使用される歴史教科書を取り上げ、特にそうした傾向の強い近代史における対外関係に関する記述を中心に、解説を加えつつその不当性を指摘したものである。本書の指摘によって、歴史教科書が少しでも改善され、一人でも多くの子供たちが祖国日本の歴史に誇りと愛情を持つこととなれば幸いである。