留学生との討論
(平成17年)

関口 貴博

私は今、東京の大学に通っている。大学のキャンパスが、祖父の兄が祀られている靖國神社の隣なので、祖父はよく「誠作(祖父の兄)が、お前を読んだのかもな。護ってくれるぞ」等と言って、何か因縁を感じているらしい。祖父の兄が本当に私を守ってくれているかどうかは別として、やはり、靖國神社というのは日本人(特に戦前を生き抜いた人達)にとって、一種の戦前と戦後を繋ぐ精神的≠ネ場所として機能しているようだ。
そんな靖國神社、教科書等が問題であるとして、先ごろ中国・韓国で「反日デモ」が起きた。私は大学で外国人留学生との交流・話し合い≠する授業を取っているので、当然テーマはこの問題となった。
留学生は、8割が中国人、韓国人の女性だった。彼女達は「悪いのは日本だから、誤る必要は無い」と口々に言った。私は中盤まで黙って聞いていた。ほとんど日本側が反論しないので、仕方なく私が言う羽目になった。被害自社女性をいじめる加害者男性≠ニいうイメージがつけばこちらの負けだと思ったから、必要以上に丁寧に穏やかに話した。
私が「愛国無罪と言われていますが、それが本当なら、いわゆる中国への日本の『侵略』も全く同じ理由で正当化されます。日本が中国に対して、かつての戦争を愛国無罪だから、謝罪も補償もしない、と言ったら納得されますか?」と言うと、何も言わなかった。
教科書の問題でも、私が「歴史的事実とそこから出て来る評価は一致しないんです。それらは分けて議論しないと」と言ったら、留学生から「中国は事実しか書いていません」と怒鳴られた。驚いたのはここで隣に座っていた英国人の留学生が「それは事実かどうか分からない。中国は一つの情報しか流れていない。」と私をサポートしてくれた事だ。彼らは当事者ではないから、客観的に物事を見ているのかもしれない。さらに驚いたのは、ある日本人学生が中国が一党支配の国だと知らず、隣の中国人女性に「検閲とかある?」と質問していたことだ。ほとんどの日本人学生は中国の政体について知らずに話していた。
韓国人学生に「竹島が日本領か韓国領かハッキリさせる為に国際司法裁判所で客観的に判断してもらいましょうよ」と提案すると「それはダメです。日本が裏で影響力を使っているから」と言った。私には、その理由が理解できなかった。しかし、最後はお互いに「謝るべきところは謝罪し、主張すべき所は主張する、という分別が大事であり、互いにいがみ合っても得はない」という点で一致した。この意味において、お互いが話し合うことは必要以上に重要なのだと感じた。

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