「今、安倍政権を救わねば日本は終わる」
―森友/加計問題の謎を解き、窮地の安倍政権を救え―

(平成30年)

大村 万集


要約


明確な証拠の無い森友/加計問題がここまで長期化し、安倍政権の致命傷となろうとしている事は不可解な事だ。この不可解さは日本においてマスコミを支配する力が米国、財界、財務省であるという前提に立たねば理解出来ない。現在の日本の政権安定にはその三者との利益調整が必須であり、森友/加計問題は安倍氏と三大権力との間に対立が生じた事を意味する。

安倍氏は三者のうち財務省と経済問題で対立した。増税を公約し、同時にデフレ脱却を目指す安倍氏だが、実はデフレ脱却の最大の障壁が消費税と認識しており、本音では減税を願っている。公約と本音の隔たりは増税を望む財務省との意見の相違から生じたものだ。そして、安倍氏の消費税に対する認識は恐らく正しい。安倍氏は異次元金融緩和が自身の意に沿わぬ増税を凌駕し景気回復することを期待したが、2014年11月、それが不可能と悟り増税延期を行った。一度目の増税延期は次の増税を確実にすることで財務省との対立を回避出来たが、2016年5月の二度目の消費税増税延期表明で安倍氏と財務省との対立は不可避となった。この結果、財務省は安倍降ろしを画策し、2017年2月の森友問題が引き起こされた。

米国、財界はアベノミクスで既に潤っており、その恩恵にあずかれなかった財務省だけが増税にこだわる必要があった。核心は軽減税率導入である。これによる天下り先の増加が彼らにとっての唯一の、かつ譲れない省益である。そのため安倍氏と財務省の税制における思惑は完全に相反する。

しかし今、安倍政権が倒れれば、次期首相が財務省の意向を汲む可能性は高く、増税により国民生活は破壊されるであろう。また、安倍氏が倒れずとも、2019年10月の増税を阻止できなければ結果は同じである。

この状況の打開策は無いように見えるが、上記構造を念頭におけば正解は見つかる。
答は消費税を減税した上での軽減税率導入だ。

この策により景気は回復し、財務省の安倍氏への攻撃は終わる。
これは安倍氏と国民が生き残るための唯一の選択肢である。


1.森友/加計問題の怪


「一強」と呼ばれた安倍政権の地盤が2017年2月以降大きく揺らいでいる。支持率低下の中核をなすのが森友/加計問題であることは大方の一致する意見であろう。

しかし、両問題は極めて異質である。これは用地費用8億円ダンピングの、あるいは獣医学部新設において便宜を図る指示を安倍氏が出したという明らかな証拠が出た段階で、初めて安倍氏の責任を問える事である。ところが、怪しげな証言や文書は山ほど出てくるが、未だにその「証拠」は見つからない。

この異様なスキャンダルが終息の気配すら見せない事は、尋常でない力学が作用している証拠であり、同時に想像以上に安倍政権が終りに近づいている事を意味している。

だが今、我々国民は安倍政権を終わらせる訳にはいかない。それは、今安倍政権が終わる事は国民生活の破壊を意味するからである。

誰が、何故安倍政権を滅ぼそうとしているのか?
安倍政権が終わると何故国民生活が破壊されるのか?
そして、どうすれば安倍政権を救えるのか?

本稿では安倍氏の言動と決断の分析から森友/加計問題の背景にある力学を解明し、これらの疑問に答える。


2.安倍政権失速の理由


本論の前に、現在の日本の政権安定の条件について認識を共有しておきたい。

ネット時代の現代でも、政権安定の鍵を握るのは依然マスメディアである。だがマスメディアは、より大きな力の下部組織に過ぎず、為政者はマスメディアの上位勢力との友好関係を築かなければ安定した政権運営を為しえない。

日本におけるマスメディアの上位勢力とは、米国、経団連、財務省の三つである。

森友/加計問題のような根拠の弱い話をここまでの大問題に仕立て上げられるパワーを持つ者はこの三者以外に有りえない。まず、以上が本論の前提である。

第一次安倍政権は無残な終わりを迎えたが、その敗因は国内保守派の期待に応えようとした事が米国の不興を買ってしまった事である。三大勢力の中でも最も力のある米国を味方に出来なかった事が政権壊滅の最大の理由だ。

第二、三次安倍政権は第一次政権での失敗を教訓として学び、活かした。2017年初頭までの好調はその点に関する分析と対策の成果である。対策とはすなわち安倍氏の政策と三大勢力への利益配分がぶつからない配慮である。

つまり、今回の政権の失速は、安倍氏の政策と三大勢力の利益が、ある時を境に相反するようになり、誰かを敵に回してしまった事を意味する。

では、安倍氏は「誰を」「何故」「いつ」敵に回したのだろうか?

その答は「誰を」が財務省。
「何故」が経済政策における意見の相違。
そして「いつ」が2016年5月である。
経済政策、その中でも消費税増税を巡る見解の相違から両者は対立関係となり、その過程で森友/加計問題が勃発したのである。

本稿で述べる問題の解決を理解していただくには、両者の対立が生じた背景の説明が必要となる。話は2014年11月までさかのぼる。


3.2014年12月衆院選挙の謎


本稿の理解に必要な安倍政権関連事項を時系列順に並べる。

2012年12月   第二次安倍政権発足
2014年4月   消費税増税(5→8%)
2014年11月   ・7-9月期GDP速報発表。結果:年率換算-1.2%
・2015年10月予定の消費税増税(8→10%)2017年4月への延期表明
・景気付帯条項撤廃表明
・衆院解散宣言
2014年12月 衆院選挙
2016年5月   2017年4月予定の消費税増税(8→10%)再延期表明


2014年11月、安倍氏は消費税増税延期を発表し、直後に衆院解散を宣言、12月の総選挙となった。しかし、この選挙には二つの疑問があった。

一つ目の疑問は「何故この時に」だ。この時の安倍政権は閣僚の不祥事等で、支持率が政権発足後最も下がっていた。任期はまだ2年も残っており、安倍氏にとって有利な時期とは思われなかった。

二つ目の疑問は「解散理由」だ。安倍氏は当初「消費税増税延期を国民に問うため」と述べた。だが、これはおかしい。何故なら解散表明時、国民はもとより、増税先送りに反対する党は一つも無かったのである。しかも、増税延期は三党合意による「景気付帯条項」に沿ったものであり、民意を問う必要は無かった。さらに、解散の理由が安倍氏の言うとおりなら、その後2016年5月の増税再延期表明で何故衆院解散をしなかったのか? むしろこの時は野党から「公約違反」と詰め寄られたのである。安部氏は本当の理由を隠している。

この二つの疑問に答える上で重要なポイントがある。2014年11月の解散表明と同時に上述の「景気付帯条項」撤廃を表明した事だ。

安倍氏は同条項の撤廃は表明したが、その理由について触れず「その時(2017年4月)消費税増税の状況を作り出せる」とだけ説明している。これは2017年4月の景気が良くなっているという意味だが、それは完全に嘘だ。何故ならその時の景気が良ければ、仮に同条項が存在しても発動されないだけで、消費税は「めでたく」10%になり同条項撤廃の必要は無い。つまり、条項撤廃の意味するところは、2014年11月時点で安倍氏が「2017年4月の景気は悪い」と予想し、それでも増税をしなければならない何らかの理由があったということだ。その時、景気付帯条項が発動される状況があるからこそ、条項が邪魔だったのだ。

二つの嘘から、安倍氏が解散した本当の理由は「以後の景気が悪化し、任期満了時の選挙戦は不利となると予想したので、被害が小さいうちに選挙をする事にした。」ということだと分かる。

2014年12月の衆院選挙の真の争点は「景気付帯条項の撤廃」だった。

安倍氏は「今回の選挙の争点は景気付帯条項の撤廃です。近い将来、景気が悪くなりますが、私は必ず消費税を上げます。よろしいでしょうか?」と国民に問うべきであった。

もちろん、正直にこんなことを言えば選挙に負けるから、どんな政治家でも言う訳が無いが…。だが、とにかく選挙で自公は圧勝した。その流れで2017年4月、ひどい景気の中で安倍氏は「増税は国民の総意です。みんなで痛みに耐えましょう!」と胸を張って宣言し、「後は野となれ山となれ」の筈だった。

しかし、事態は意外な方向に進む。増税に向けて準備万端だった筈の安倍氏が2016年5月、突如、増税再延期を表明するのである。安倍氏のこの意外な決断は何を意味するのだろうか?


4.アベノミクスの行く手を阻むもの


ここで消費税の影響を考えるために評論家ビル・トッテン氏の「消費税が日本経済をデフレに導いた」という意見を挙げておきたい。私も氏の著作を読んでその可能性は高いと考える。

日本がデフレに向かった理由として従来からいくつかの要因が挙げられている。主たるものとして言われているのは@バブル崩壊 A為替要因説 B高齢化の3つである。

以下私の考えを述べる。

@1990年前半代のバブル崩壊は時期的にも合致するように思われるが、不良債権の処理は2005年頃に済んでおりもう15年近く経過している。しかし、その後もデフレ脱却の兆候は見られておらず、関係があるというには大きな疑問が残る。

A1985年のプラザ合意に代表される為替要因も一見有力に見えるが、日本のGDPにおける輸出の割合は1割に過ぎず円高を主原因とするの合理的ではない。さらに言えば第二次安倍政権誕生前は1ドル80円前後であったのが、政権発足後は1ドル120円前後と大幅に円安に振れたもののデフレ傾向に変化は無い。

B日本GDPの6割は内需である事から社会成熟度の高まり、また高齢化が要因という説にも一定の理はある。しかし、高齢化が始まる以前からデフレは始まっており、時期的矛盾がある。

そして消費税である。

消費税が導入される直前まで日本のGDPの伸びはおおよそ10%前後であった。それが1989年消費税が導入され、1992年頃からその伸びは4-5%に低下した。1997年、消費税3→5%の増税時、税収が伸び悩んだ事は記憶に新しい。その後日本はゼロ成長に突入した。

2014年4月の消費税5→8%増税後の惨状は皆さんが既に知る通りである。

時期的な符合、そして、上述のとおり日本GDPの6割が国内消費である事を踏まえると消費税デフレ原因論は十分に可能性のある説である。

さらに消費税のもう一つの問題として、逆累進課税の性質を付け加えたい。NHKによる消費税5%時と8%時での年代別消費動向を比較した調査結果は40歳代±0、30歳代−5%、20歳代-7%で、子供を抱える20歳代ではなんと-10%という結果であった。これが異次元金融緩和が始まった後の数字であることを踏まえると衝撃的な結果である。当初からアベノミクスは富の配分という点に問題をかかえていたが、消費税増税がそれに追い打ちをかけたのである。少子化の問題にもこれは大きく関わっている。

デフレ要因が従来から言われている3要因の複合的なものという可能性は当然残る。しかし、ここに消費税も加えて再検討すべきである。そう主張する根拠は十分にある。

また、重要なのは、消費税も加えた上記4要因のうちバブル崩壊は過去の事でもう変える事は出来ず、為替要因と高齢化も簡単に手がつけられるものでは無い一方、消費税は決断一つで変更出来るという点だ。

安倍氏は消費税5%下でアベノミクスは力を発揮するという手ごたえを感じていた。だからこそ安倍氏は5から8%への増税に同意した(本当はもう少し待ちたかったのだろうが)。しかし、アベノミクスは消費税8%の前に惨敗した。

安倍氏がこの経験から学んだ事は、アベノミクスが消費税5%でインフレ局面を作る力はあるが、8%では無理だということだ。それなら消費税10%への増税などできる訳が無いと安倍氏が思うのも当然だ。不可解な2016年5月の増税再延期発表は、安倍氏が消費税に対してこのような認識を持たない限り起こり得ない。そして、ここで景気付帯条項撤廃も安倍氏の意図で無かった事も明白である。

また、あまり注目されていないが、2014年11月18日の増税延期表明会見でも安倍氏は「消費税増税により個人消費が押し下げられた」とはっきり述べている。良く見れば安倍氏の増税したくない気持ちは随所に表れている。当然5→8%の増税も安倍氏の意志では無い。

では、消費税増税が安倍氏の意向でなければ誰の意向か?それは財務省以外に有りえない。
そもそも財務省が消費税増税を望んでいる事は広く知られているところである。

恐らく安倍氏は「消費税減税でアベノミクスは生き返る」と今も信じている。

だが、ここで二つの疑問が残る。

一つ目は財務省の消費税10%へのこだわりである。財務省は何故安倍氏に景気付帯条項を撤廃させてまで消費税を10%に上げようとしたのか? 10%はともかく、条項撤廃はプライマリーバランス改善を最優先課題とする財務省の要望としては余りにも奇異である。

二つ目は安倍氏が消費税=ブレーキと考えているのなら、何故彼は減税を表明しないのか? である。次章でこれら残る最後の疑問について答え、問題の全容を明らかにしよう。


5.森友/加計問題の全貌


デフレ期の今、三大勢力と同時に折り合いをつけることは難しい。しかし、安倍氏はここまでアクロバティックな手法でそれを達成してきた。簡単にまとめると、アメリカには日本政府歴代最高の米国国債買いで、経団連には円安と株高で、そして、財務省には消費税10%増税の約束でそれぞれを味方につけていたのである。

ところが前項で示した理由から、安倍氏は消費税を10%にする事が出来なくなった。そして、そのために安倍氏は財務省を敵に回してしまった。

しかし、理解出来ない人も多いだろう。安倍氏はとにかく8%までは消費税を上げたのだ。10%への増税が無理だと何故財務省が安倍氏の敵になるのか?
それは10%と8%の間に大きな違いがあるということである。

答は軽減税率だ。

軽減税率は消費税10%から導入されるが、何を対象とするかはまだ決まっていない。だが、非輸出関連業界にとって、売り上げを悪化させる消費税は死活問題であり、軽減税率の対象にして欲しい業界は山のようにある。

古賀茂明氏などが指摘するように、彼らは軽減税率導入が決まれば「軽減税率の対象を決める役所=財務省」の前に列を作ることになる。それはもちろん天下りという手土産を持ってであり、これが財務省の新たな権益になるということだ。すなわち、消費税が10%にならないと軽減税率は導入されず財務省には何の利益も生まれない。これが10%へのこだわりの理由であり、だから消費税10%を拒否した安倍氏は彼らの敵なのである。

一度目の増税延期は景気付帯条項の撤廃で許してもらえたが、二度目はそうはいかなかった。2016年5月、安倍氏は不本意ながら財務省を敵に回すこととなり、森友/加計両問題は安倍氏の裏切りへの復讐として財務省により引き起こされたのである。両問題とも官公庁絡みの案件であり、特に前者は財務省管轄下の話である事に注目すべきだ。

最後に残る疑問は「安倍氏が消費税を下げたいと思っているのなら何故それが出来ないか」だ。

それに対する答は、「消費税を下げると、10%への道のりが遠のくため財務省が許さないから」である。増税延期ですら財務省はこれだけ怒っているのである。いわんや減税など出来る訳が無い。

財務省が最も恐れているシナリオは消費税を下げて景気回復、税収増となる事だ。そうなれば消費税10%の可能性は完全に無くなる。これは彼らにとって最悪の事態である。従って消費税減税の話が出たら、財務省はどんな手を使ってでもそれを阻止しようとするだろう。そして、ここまでの検討から減税による景気回復の可能性は高い。

今現在、2019年10月に消費税が10%になる予定だが、財務省はその10%達成が確かなものであれば、安倍氏の裏切りを許しても良いと思っている。安倍氏を捨て身になるところまで追い込んで、消費税減税を企てられても困るからだ。

一方の安倍氏は森友/加計問題が財務省の仕業であることを承知している。そして、それが彼の予想を越えた強力な攻撃だったからこそ、今、減税はおろか、増税再々延期すら口に出来ないのである。それを表明した瞬間に財務省との復縁の可能性はゼロになり、財務省のさらなる攻撃が始まる。次の攻撃に政権は持ちこたえられないだろう。こうして、対峙するガンマンの如き両者の間で消費税は8%のまま膠着状態となっていた。

だが現状維持で時を重ねれば財務省の勝ちである。安倍氏が勝つためには先に仕掛けて何としても消費税10%を阻止しなければならない。

鎮静化していた森友/加計問題が2018年に入って突然再燃したのはこうした経緯の延長線上にある。死者まで出した今回の問題蒸し返しは、安倍氏の仕掛けを感知した財務省が先手を打った可能性が高い。消費税10%を巡る最後の攻防が繰り広げられている。

以上で事態を理解するためのピースは全て出揃った。

安倍氏の思考過程を含めた経過を時間軸に沿って再度まとめる。

2012年12月   第二次安倍政権発足
2013年中   安倍氏は財務省に消費税10%への増税を約束。財務省は安倍氏を支援。
2014年4月   消費税8%に増税(2015年10月10%へ増税予定)
2014年11月   7-9月期GDP速報値を見て安倍氏、アベノミクスが消費税8%に勝てないと認識する。
2016年12月の任期切れまで待つと不利と判断し解散総選挙を決意。
2015年10月予定の消費税増税を2017年4月に延期。
財務省を敵に回さないために景気付帯条項を撤廃。
だが、安倍氏は胸の内で恐らく景気は上がらないと予想。
自分の予想が外れて欲しいと祈る想いでその後の経済動向を見つめる。
2014年12月   衆院総選挙。自公圧勝だが結果は改選前とほぼ変わらず。
 (その後の景気は安倍氏の予想通り回復せず)
2016年5月   ここまでの景気動向から消費税10%への増税はデフレ悪化をもたらすと
安倍氏判断し、消費税増税再延期を表明(2017年4月予定→2019年10月に)。
この瞬間から財務省は敵となり安倍降ろしを画策。
2017年2月   森友問題表面化
2017年5月   加計問題表面化


これが森友/加計問題の全貌である。


6.今、安倍政権が終われば国民生活は壊滅する


後方視的に見れば、好発進したアベノミクスを早すぎた消費税8%がぶち壊し、安倍氏の計画は大きく狂ってしまった。この増税のタイミングも財務省の意向を優先した結果だ。さらには自身の意に反する景気付帯条項撤廃も裏目と出た。2016年5月の増税再延期表明を野党から公約違反と責められた時も、安倍氏は「悪いのは財務省だ」と叫びたかったに違いない。

まさに踏んだり蹴ったりだが、安倍氏は先を急ぐ必要があった。上記の三者懐柔策はあくまで一時しのぎであり、本当に景気が回復しなければ、ここまで打った手が全部逆回りを始め、今度は自分と国民の首を絞めることになる。マネタリー・ベースを3倍にした大博打のツケはスタグフレーションという悪夢で跳ね返ってくる。タイムリミットは五頭のクジラ(GPIF、共済、かんぽ、ゆうちょ、日銀)で演出してきた幻想の株高が終わる時だ。幕切れの時は近い。

改めて強調するが2016年5月の安倍氏の決断は画期的な事である。この時安倍氏は財務省を敵に回し、今の窮地をある程度予想しながらも国民の生活を選んだ。政治家としてこれ程正しく勇気ある行動は他に無い。「強者の代理人」と思われた安倍氏は、実はきちんと国民の方を向いていたのだ。思わず「安倍氏の男気に応えようではないか」と言いたくなるところではある。しかし、実際には国民の選択肢はほとんど無い。

それは今、安倍政権が倒れたら次の首相は間違いなく財務省に言いなりの人物だからだ。その人物は躊躇無く消費税を増税し、国民生活を破壊するであろう。金融緩和という賽を振ってしまった以上、どのみち安倍氏がとことんやってもらう以外に国民の助かる道は無い。この現状で財務省の傀儡が政権を握る事は最悪であり、安倍氏に政権の座を降りてもらう訳にはいかないのだ。


7.解決策は財務省をも救う


ここまで安倍氏の言動と決断の矛盾をつなぎ合わせる事で、森友/加計問題の背後に財務省がいるという結論にたどり着いた。ならば国民が財務省に抗議すれば問題は解決するのだろうか? 残念ながらそれはありえない。仮に森友/加計問題が運よく収束出来たとしよう。しかし、安倍氏が減税を企てる限り、新たな次の矢は安倍政権の息の根を止めるまで尽きる事無く飛んでくる。森友問題の不発を見越すかのような加計問題登場のタイミングの良さは偶然ではない。

複雑怪奇かつ強靭なネットワークを持つ財務省を倒す事は不可能だ。従って、本問題の解決策は財務省を攻撃する事ではなく、財務省をも救うところに活路を見出すべきである。求められているのは安倍氏の経済政策と財務省の利益を両立させる事だ。

問題は二つの対立に集約された。安倍氏は消費税を下げたい。財務省は軽減税率導入を導入したい。だが、軽減税率は消費税10%からの採用だ。

これらの条件を満たす案が答である。一見無理と思えるがそうではない。財務省が譲れないものの本質が何かを良く考えれば答は自然に導かれる 財務省が求めているのは消費税を10%にする事? 軽減税率の導入? この二つの案件は不可分のものではない!

もうお分かりだろう。
正解は「消費税を下げて軽減税率を導入すること」である。
これで誰も文句を言うものはいない。
「天下りはどうなる?」という声が聞こえてきそうだが、今回、そこだけは目をつぶろう。国民が得る減税という大きな成果に比べれば天下りは極めて小さい話だ。許されざるはむしろ莫大な内部留保を離そうとしない大企業だ。しかし、とにかくこれで絶命寸前のアベノミクスは息を吹き返し景気は必ず好転する。不可解なスキャンダルは影を潜め政権は安定、全ては丸く収まるのだ。大岡越前の三方一両損の得ならぬ、三方一両得の得である。

だが、減税による歳入減を心配する人もいるだろうから、それに対する保険について述べておく。消費税1%はおおよそ2兆円の税収として計算されている。仮に消費税を5%に下げたら6兆円の減収である。国債増刷無しとすれば、外為特会をその損失補填にあてる事を提案する。外為特会とはつまりは米国債である。このカードを切るのは相当な勇気がいるが、今政権が置かれた状況を考えれば他に手立ては無い。

高橋洋一氏が述べるようにG7の日本以外の国の米国債保有率はGDPの5%であるのに対して日本はこれを100兆円規模、対GDP比で20%近く持っている。財務省の説明では1ドル100円で売ると損得無し、円安になると利益が出るという。今はその円安だ。日本の景気が良ければ、他国より多く米国債を持っていても良いだろう。だが、今はそういう状況ではない。ここは安倍氏が命をかけてでも米国に理解を求めるべきである。とはいえ、消費税減税で、増収の可能性は高く、結果的にその切り札に頼る可能性は低い。

本稿で示した策は、日銀黒田バズーカなどと比べて地味な手であるが、何よりリスクが低く、気楽に打てるのがいい。妙案無く座して死を待つくらいなら是非とも本策の採用を検討されたい。

国民は高いリテラシーで傷だらけの安倍政権を支えて欲しい。

そして、この献策がまだ間に合ううちに安倍氏に届く事を願う。

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