常に国家の最悪事態に備へよ
(平成19年)

獨協大学名誉教授

中村 粲

日本は敵性国家と隣り合わせで生存してゐる、と申しても過言ではない。それはロシア、南北朝鮮、支那である。
歴史を鑑とする立場に立つならば、これら三国が近代に於て日本に何をしてきたかを顧みれば彼等の敵性は明らかである。同時に、戦後この方、これら三国(あるいは四国)が我が国に対して行ってきたことを一瞥しただけでも、これらの国々が、その悪党ぶりに於ては百年前から一向に改まってゐないことが判る。
ソ連時代からのロシア人による北方領土奪取、北朝鮮の日本人拉致や核に因る強迫、韓国の竹島強奪の反日性を見よ。中共のならず者ぶりについては今更喋々するまでもなく国民周知のとおりである。日本人は斯様なごろつき国家と隣り合わせに住んでゐる。
これまで無事に来られたのは、日本が米国の妾であるからであって、日本一個の実力で彼等の圧力や脅威をはね返してきた訳ではない。だが、その日米の蜜月にも次第に翳りが見えてきた。日本が米国といふ檀那から袖にされた暁、日本は三人のごろつきの脅迫や嫌がらせに耐へることが出来るのかどうか、大いに疑問ありだ。
日米関係が断絶する時は早晩来る、と覚悟しておく必要がある。その最も危険な時に備へて平素の用意を整へておくのこそ政治家たる者の第一の責務であらう。来る参院選の最大争点は年金問題だとマスコミは騒ぐ。冗談ではない。国家存亡の危機がやって来るかもしれぬ時に、年金が最大争点とは痴人の戯言である。強盗が徘徊する時に、戸締りもせず武器も用意せずに、預貯金の残額調べをして何になるのか。
この稿が印刷される時、参院選は終ってをり、政界地図がどう塗り替へられてゐるか予測は出来ない。
とまれ、国家の大事を忘れて目先の問題で大騒ぎするだけの国政選挙が繰り返されてゆく。国防や教育や外交は、まるで「国政」ではないかの如くに、である。
併しいつの日か、米国が日本と袂を分かち、露鮮支の強大な圧力がまともに我国にのしかかって来る時が来よう。左様な国家危機の秋に備へて、国家意思の統一、国防資源と国防力の整備はどうするのか。
常に国家最悪の事態を念頭に於て政務に励むのが為政者の最重要責務であると大声急呼するものである。

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