金日成、毛沢東、ケネディ、朴正煕らこそ「A級戦犯」
(平成19年)
名越二荒之助
昨年の7月末のことであった。韓国のKBSテレビが私のところへ取材に来た。記者の2人は東大の大学院を出ているそうで、歴史にも詳しく謙虚であった。彼等は一番に
「A級戦犯の分祀をどう考えるか」
と聞いてきた。靖国神社の御祭神に対して、文句を言うらしい。
私は直ちに応じた。
「韓国にA級戦犯がいるではないか」と。
彼らは怪訝な様子で「それは誰ですか」と聞いてくる。
「言わずと知れた朴正煕大統領だよ。彼はアメリカのベトナム戦争に同調して、韓国兵30万を10年間にわたって派遣した。大侵略して負けると撤退した。朴夫婦の墓は、現在国立墓地の一番高い場所に造成されている。先年私がベトナムに言ったら、若者は『韓国大嫌い。韓国人はベトナム人を馬鹿にして平気でビンタをとるし、混血児を1万人も作って知らん顔だ』と怒っていた。ベトナムが、A級戦犯・朴大統領の墓を撤去せよと言ってきたらどうするか」
と逆に詰問した。すると2人の記者は真面目に
「初めて聞きました」
と驚いていた。そこで私は
「ベトナム人にとって朴大統領はA級戦犯だが、韓国人にとってA級戦犯は別にある。それは誰か、考えたことがあるか」
私はそう前置きして続けた。
「お2人は、A級戦犯と言えば、東京裁判で断罪され、今は靖国神社の御祭神となった日本軍人たちの事と思っているらしい。ところが、日本と韓国は戦争をしていない。それどころか、当時の朝鮮人は大東亜戦争に競って志願し、昭和19年9月からは、徴兵に応じた。日韓は共に戦った戦友同士である。
韓国にとってA級戦犯と言えば、朝鮮動乱で突如侵略してきた北朝鮮軍の金日成ではないのか。
その時国連16カ国は軍隊を派遣して韓国軍を助けた。動乱も半年で終わるはずだったが、突如毛沢東が百万の軍隊を派遣した。そのため3年間血みどろの戦争をするようになった。韓国にとって金日成と毛沢東こそA級戦犯だ。A級戦犯の分祀を言うなら、北朝鮮と中国に対して抗議すべきだ。それを忘れて、日本に向って言うとは何事か。こんな無知では、国際的には相手にされなくなるよ。」
数日後の日曜日、ベトナムからの留学生3人が拙宅を訪ねてきた。ベトナム戦争が終わった頃の留学生は
「ベトナムはかつて13世紀にモンゴル軍を3回にわたって追い払い、戦後はフランス、アメリカ、韓国と戦って勝った。世界の最強国だ」
と誇っていた。ところが共産国家になると生活は極貧状態になり、百万人の国民がボートピープルとなって祖国を捨てて逃亡し出した。すっかり自信を失った彼らだった。しかし今はもとのベトナム人に戻りつつある。彼ら3人に
「ベトナム戦争を本格的に始めるのは、アメリカのケネディ大統領であり、それに朴大統領が追従した。2人のA級戦犯の墓を撤去せよ、とは言わないのか」
それを聞いてみた。彼等は口を揃えて答える。
「ベトナムは、日本と同じ大乗仏教の国です。死者を鞭打つ事はできません」と。