書評「いわゆるA級戦犯」(小林よしのり著)
(平成18年)

金丸 晃得

「兵なくして王なく、財なくして兵なく、民なくして税なく、正義なくして民の繁栄なし」
私の大好きな中近東の金言で、イスラム教出現以来、古代オリエントにも遡るとも言ふ。さう、正義なき國は滅びるのだ。中田塾長とは違ひ、私にとって大東亜戦争は自世代の体験ではない。自らの祖父母の世代の戦争なのだ。とは言へ、ポツダム宣言受諾から自分の出生までの年月よりも自分の年齢の方が長いのだから、さほどの昔でもない。そのポツダム宣言受諾以後、我々戦後日本人は、何と英霊達の正義を裏切った。私はその裏切の所産こそ、年号が変はって以来延々と今も続く不景気だと思ってゐる。
正義なき國のあり様など空疎なのだ。今朝未明から何発か北朝鮮が日本に向けてミサイルを打って来た。健全な國ならば、これを宣戦布告と看做して平壌にでも即日空爆など始めるところだが、英霊達の正義への裏切者の一人である小泉首相はさうではなかった。アメリカの顔色を見、支那の顔色を見、せいぜい出して来た答へが万景峰号の入校禁止、それも無期限ならぬたったの半年だ。
あのイラク侵攻では、大量破壊兵器の開発の容疑だけ、おまけに冤罪だった。それへ日本はあんなに加担したのに、北朝鮮には小泉首相のなんとお優しいこと。要は、正義が無いから外交も一貫性が無いのだ。大東亜の英霊たちの正義を裏切ったから、かうなったのだ。

世に言はれる「A級戦犯」とは、連合国の都合で私刑された人々なのであり、天道に背いた輩では断じてない。寧ろ天道に背いたのは、英米仏を筆頭とする帝国主義列強、私が呼ぶところの「人喰ひフィランジュ」である。十字軍の時代、イスラム教徒達はアラビア語で西ヨーロッパ人キリスト教徒が行ふ略奪や喰人行為を軽蔑して、彼等を「フィランジュ」と一括して呼んだ。語源は、西ヨーロッパで支配者となったゲルマン人の一氏族フランク族から来てゐる。その上オスマン・トルコ語では、このアラビア語の「フィランジュ」と同一語源の言葉は「人喰人種」をも意味してゐるのだ。だから私は欧米白人帝国列強を「人喰いフィランジュ」と呼ぶのである。

「人喰いフィランジュ」のやり方は悪辣だ。平和に先住地で暮らしてゐるだけの人々に、ヤクザさながらに言掛りりをつける。その要求を受け容れれば増長して新たな言掛りをつけ、こちらが不満を言へば腕尽で狂った様にかかって来る。物事の道理についての規範感覚と云ふものが無い。そのくせ他人には規範感覚の所在を要求し、ありとあらゆる言葉を駆使して自分の行為を「正当化」する。
その上、その言葉を注意深く他人が突詰めたときに自分の悪を指摘される自覚も無しにだ。そして万が一指摘されると、またまた腕尽。殊に非道いのはアメリカだ。

そのアメリカに正義を骨抜きにされて英霊達を裏切り、60年経っても目が覚めないのが戦後日本である。それでも昭和の内は英霊達の神力で高度経済成長も出来たが、天子が代替りしたらばそれも尽きた。そして今、北朝鮮相手に右往左往だ。あんな馬賊風情にである。これ、全て東京裁判史観の呪縛で、かつての日本の正義を見失った故である。

本書を読んでまだ戦後民主主義を支持する者は、もうカルト信者の悪魔崇拝者だ。今こそ英霊達の正義を取戻す秋なのだ。
怒りにまかせた乱文、お詫び致します。

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