腑に落ちぬこと 国の堕ちること
(平成16年)
大東亜青年塾 副塾長
上谷 親夫
どうしても、腑に落ちぬことがある。それは国会議員と言うのは、国民世論の動向を見極めて、それを立法し法制化していくのが、その仕事の筈である。ところが近年、国民の殆ど誰もが望みもしていないことが法制化され、毎年8兆円以上の国家予算(税金)がこれに注ぎ込まれている、という事がある。
それは最近誰もが目にしている「男女共同参画社会基本法」である。内閣府に男女共同参画局を設け、文部科学省には男女共同参画学習課をつくって推進拠点とし、予算を内閣府、文部科学省、厚生労働省、総務省等に、巧みに分散させてつくられており、その総額は前記の通り8兆円以上となり、その膨大な予算は、我が国の「家族の絆」破壊のジェンダーフリー運動の、原資とさえなっているのである。
どうしてこの様な事が起こるのであろうか。この様な法律が国会を通るためには、それ相応の賛成議員の数が要る。こんな国民が夢想だにしていない法律が、短時間にタスの国会議員の賛成を得るには、その為の工作をする指令等が要る。
我が国には、平成11年に中国共産党当局の発表で、在日する中国共産党員は1万1千人、影響する(させる事が出来る)愛国(中共)社会団体は450とある。そして最近耳にする事は、これ等の党員は対日工作員となり、日本の国会議員1人に対し与野党を問わず2〜3名、実力者と言われる者には5〜7名が専従して張り付き、中央の指令一本で各種の運動、各種の立法、各種思想の普及に、活発に動いているということである。これで国民が望みもしていない、日本民族の心の柱を腐らせるような法律が、何の前触れもなくアッという間に決まる秘密が解けて来るのである。
我々は余ほど厳しい眼で、国会議員の動きと其処に出入りする各種団体の運動員たちの動きを、監視していなければならない。ちなみに彼ら工作員の運動資金は中国銀行が全て潤沢に面倒をみていると言われる。
昨年になるが、今若い人たちに人気の作家、赤川次郎の講演を北陸大学で聴いた。
学生を主体とした万人の聴衆に対し、赤川次郎は
「我々は学校で、太平洋戦争は日本の侵略戦争であると教わり、全国民が選んだ国会議員の人たちも、国会に於て『日本は侵略国家である。迷惑を懸けたアジアの周辺の国々に対して謝罪せねばならない』と決議している。それにもかかわらず、この間の戦争は正義の戦いであった、聖戦であったと言い募る人達がいる。間違った歴史認識の人間が後を絶たない。この様なことでは我々は恥ずかしくて、アジアの人々に顔向けが出来ない」と言うと、一斉に拍手が沸き起こった。私は情けなくて四、五日間気が滅入った。
アメリカが、日本を二度と立ち上がる事が出来ぬようにと始めた戦後教育は、かく迄も見事にその成果を挙げた。戦後教育を受けた人間は、小泉総理を始め、日本の社会の指導層、大学から小学校に至るまでの各種学校の教師の総てとなってしまった。この流れを正すには、全国の教師はもとより国民すべてを教育し直すことから始めなければならない。この様にすべての人々が脳洗浄された状態での戦後民主主義でどうして正しい政治が機能するか、衆愚政治以外の何ものでもない。
教育は国の根本である。
かの香港が、イギリスの統治が終了すると同時に、中共は先ず歴史教科書を書き改めた。しかし我が国の言政治体制ではその様な事は太陽が西から出るというが如く不可能である。
小泉首相が二度目の訪朝をした。そして、先に帰国した人たちの子供5名を連れて帰ってきたが、残りの人々の調査は依頼しただけでその期日も切らず、逆に25万トンの米と、1千万ドルの医療品の支度を、明年中に実施することを約束してきた。
この成果に対して拉致家族の人たちは、一斉に怒りを爆発させた。当然であろう。
しかし此の拉致家族会の怒りに対し、一夜明けると全国から、一斉に反発のメールが届けられた。そして小泉首相の支持率は、訪朝前より5%以上も上がった。――ということは、訪朝の成果が評価されたということである。
何と言う情けない国に成り果てたのであろうか。
泥棒が盗っていったものを返すのに、わざわざ出かけて行き、81億円と言う手土産を持って行く。そしてその泥棒に泥棒の調査を依頼するのも間抜けな話であるが、その期限の約束もしてこなかった。日本警察が精魂傾けた調査結果の付け合わせもしてきていない。しかし多数の国民は、これに賛意を表している。
民族としての誇り、国家意識に立った毅然たる態度――といったものは、もうその言葉さえも忘却の彼方に消え去ろうとしている。
我々は、本当に覚悟を新たにしなければ、この国は溶けて無くなってしまうことになる。
日本を昔に返さねばならない。